磁性
2018.11.26
磁性とは、磁石の性質です。棒磁石を思い出してください。棒磁石には、N極とS極があり、N極同士及びS極同士は反発し、N極とS極は引合います。棒磁石からは、N極からS極に向かって磁力線が出ていますが、この矢印の方向に磁力が働きます。
磁性という性質は、原子レベルで見ると電子の回転により発生しています。電子は負の電荷を持ち地球のように自転しています。この自転により、電子自体が極小の磁石となります。これが磁力発生の原因です。
磁性には、強磁性、常磁性、非磁性があります。強磁性とは、磁石のように強い磁力を持っている性質です。常磁性とは、磁石のような磁力はありませんが、磁石を近づけるとつく性質です。非磁性とは、磁力もなく、磁石にもつかない性質です。
原子レベルで考えると、全ての電子磁石の方向が揃いかつ動かない性質が強磁性、通常は、電子磁石はランダムな向きですが、磁石が近づくと一斉に方向が揃う性質が常磁性、常に、電子磁石の方向がランダムで固定されている性質が非磁性です。
鉄は、常磁性と強磁性をもつ代表的な金属です。鉄は、通常は常磁性を示しますが、ある条件で磁化させると強磁性の性質を持ち磁石になります。しかし、鉄の強磁性も温度を上げていくと770℃以上で磁性を示さなくなります。この変化を磁気変態といい、変態温度(=770℃)をキュリー温度といいます。
鉄以外の金属で磁性を示すのは、強磁性体のニッケルNi、コバルトCo等があります。ステンレス鋼は、鋼にクロムCrとニッケルNiを溶かした合金鋼ですが、成分により磁性が異なります。クロム系ステンレス(13%Cr、18%Cr)は磁石につきますが、クロム・ニッケル系ステンレス(18%Cr-8%Ni)は磁石につきません。
磁性という性質は、原子レベルで見ると電子の回転により発生しています。電子は負の電荷を持ち地球のように自転しています。この自転により、電子自体が極小の磁石となります。これが磁力発生の原因です。
磁性には、強磁性、常磁性、非磁性があります。強磁性とは、磁石のように強い磁力を持っている性質です。常磁性とは、磁石のような磁力はありませんが、磁石を近づけるとつく性質です。非磁性とは、磁力もなく、磁石にもつかない性質です。
原子レベルで考えると、全ての電子磁石の方向が揃いかつ動かない性質が強磁性、通常は、電子磁石はランダムな向きですが、磁石が近づくと一斉に方向が揃う性質が常磁性、常に、電子磁石の方向がランダムで固定されている性質が非磁性です。
鉄は、常磁性と強磁性をもつ代表的な金属です。鉄は、通常は常磁性を示しますが、ある条件で磁化させると強磁性の性質を持ち磁石になります。しかし、鉄の強磁性も温度を上げていくと770℃以上で磁性を示さなくなります。この変化を磁気変態といい、変態温度(=770℃)をキュリー温度といいます。
鉄以外の金属で磁性を示すのは、強磁性体のニッケルNi、コバルトCo等があります。ステンレス鋼は、鋼にクロムCrとニッケルNiを溶かした合金鋼ですが、成分により磁性が異なります。クロム系ステンレス(13%Cr、18%Cr)は磁石につきますが、クロム・ニッケル系ステンレス(18%Cr-8%Ni)は磁石につきません。
鉄の性質 ⑤電気特性と熱特性
2018.04.01
金属の電気の通し易さである電導率と熱の伝わり易さである熱伝導率の一覧表を下に示します。
電導率は大きい程よく電気を通すので、金属では銀Agが一番です。銅Cuは2番目によく電気を通し、銀より安いので電線としてよく使われています。鉄も電気を通し強度が高いので、高圧電線の芯材に使われています。
熱伝導率も大きい程よく熱を伝えます。表をよく見てください。電導率が大きい順に左から並べていますが、熱伝導率の大きい順番も全く同じになっています。
電導率と熱伝達率は、伝えるものが電気と熱で全く異なりますが、物理的には、共通性があります。これは、金属の自由電子密度や比重、結晶構造等が影響しています。
表 金属の電導率、熱伝達率の比較 *単位:電導率1000000S/m、伝導率W/mK
元素名 銀 銅 金 アルミ 亜鉛 鉄 錫 鉛
原子記号 Ag Cu Au Al Zn Fe Sn Pb
電導率 66.7 64.5 45 40 18.1 11.2 10 5.2
熱伝導率 429 401 317 237 116 80.2 66.6 35.3
電導率は大きい程よく電気を通すので、金属では銀Agが一番です。銅Cuは2番目によく電気を通し、銀より安いので電線としてよく使われています。鉄も電気を通し強度が高いので、高圧電線の芯材に使われています。
熱伝導率も大きい程よく熱を伝えます。表をよく見てください。電導率が大きい順に左から並べていますが、熱伝導率の大きい順番も全く同じになっています。
電導率と熱伝達率は、伝えるものが電気と熱で全く異なりますが、物理的には、共通性があります。これは、金属の自由電子密度や比重、結晶構造等が影響しています。
表 金属の電導率、熱伝達率の比較 *単位:電導率1000000S/m、伝導率W/mK
元素名 銀 銅 金 アルミ 亜鉛 鉄 錫 鉛
原子記号 Ag Cu Au Al Zn Fe Sn Pb
電導率 66.7 64.5 45 40 18.1 11.2 10 5.2
熱伝導率 429 401 317 237 116 80.2 66.6 35.3
鉄の性質 ④加工性と加工方法
2018.03.28
鉄の強度や組織が、炭素量と熱処理によって変わるることが、鉄の第一の長所ですが、
次に重要な特徴が、加工がし易いということです。鉄鋼製品は、需要家で加工し、需要家の目的にあった形に成形されます。この需要家での加工には、鍛造、圧延、引き抜き、押し出し、せん断、曲げ、絞り、張出し等あります。加工がし易いとは、需要家での加工方法が多くあり、かつ、各々の加工でも他の素材より加工し易いということです。この鉄の強度コントロールがし易く、かつ加工し易いという特徴とコストが安いことが相まって、鉄は金属の中で最も使用量が多くなっています。
加工法の説明の前に、金属の弾性と塑性を説明します。弾性とは、例えば、バネを引張ると伸び、引張をやめると元に戻りますが、この元に戻る範囲内の変形をいいます。塑性とは、例えば、針金を手の力で強く曲げると、手を放しても曲げた形状がそのまま残ります。この元に戻らない変形を塑性変形といいます。
針金を曲げる時を思い出してください。最初少し力を加えた時は、針金は弾性変形内で元に戻ろうとしますが、さらに力を加えていくと塑性変形となり元に戻らなくなります。このように、変形の最初の段階は弾性変形が起こり、さらに力を加えていくと塑性変形になります。
縦軸に荷重、横軸に変形量の伸びをとると、このグラフは、金属の荷重と変形の関係を表しています。このグラフから、荷重があるところ迄は弾性変形が起こり、それ以上の荷重では塑性変形が起こることを分かります。
この弾性限度の荷重を降伏点YP(Yield Point)、最大荷重を引張強度TS(Tensile Strength)、破断した伸びを伸びEl(Elongation)といい、金属加工では重要な指標です。
金属加工とは、金属に降伏点以上の力を加え、塑性変形を起こし、元に戻らない形状を作ることをいいます。したがって、降伏点が小さい程、加工がし易く、逆に大きい程、加工がし難くなります。このことは、加工の基本であり重要です。鉄の場合は、一般的に降伏点と引張強度及び硬さは比例関係にあり、伸びは逆比例の関係にあります。
(鍛造)
鍛造とは、プレス機やハンマー機等で、素材の一部または全体を圧縮、又は打撃により加工する方法です。身近な鍛造品としては日本刀があります。赤く加熱された日本刀をハンマーで叩きながら鍛錬する様子は鍛造の原風景だと思います。
鍛造には、温度で分類すると、熱間、温間、冷間に分けられ、又、鍛造方法で分類すると、自由鍛造と型鍛造に分けられます。
熱間とは、素材を800℃~1000℃程度に加熱して鍛造する方法です。冷間とは、常温で鍛造する方法で、温間とは、熱間と冷間の中間の温度で鍛造する方法です。
熱間、冷間の得失は、複雑な形状や大型部品の加工には、熱間が優れますが、表面の仕上がりや寸法・形状精度の面では冷間の方が優れます。したがって、冷間鍛造は、鍛造後の機械加工がいらないので、自動車部品のボルトやナット、歯車などの小型製品に利用されています。
自由鍛造とは、型や枠がなく自由に加工形状を決められる鍛造ですが、型鍛造は、決められた型通りに鍛造します。自由鍛造は、大型部材を製造するのに主に用いられ、型鍛造は、小・中型部品の量産に用いられます。
(圧延)
圧延とは、上下の圧延ロールで素材を薄く延ばす加工方法です。圧延は、うどん粉を延ばす作業に似ていますが、大きな違いは、材料が横方向に伸びないことです。これは、圧延の場合、圧延方向に強く引張り、材料が横方向に拡がらないようにするからです。したがって、圧延前後の材料の幅はほとんど変化しません。圧延は、製鉄所等で板材や条鋼の製造に広く利用されています。
製鉄所の板材の圧延を例にとりもう少し詳しく圧延を説明します。熱間圧延とは、素材の温度を上げて圧延することで仕上圧延入側で800~900℃、出側で500~700℃程度で圧延します。温度が上がれば素材が軟らかくなるので、高い圧下率と高速圧延が可能になります。最新鋭の熱間圧延機は、圧下率90~95%(仕上圧延入側厚=数十mm、出側厚=数mm)、圧延速度100km/H程度で圧延が可能です。
冷間圧延とは、素材を加熱せず常温で圧延します。この為、高精度の圧延が可能で、通常材は、板厚0.4mm~数mmですが、極薄材として、板厚0.1mm程度、板厚精度±3%程度の圧延も可能です。その他の圧延としては、H形鋼の圧延方法であるユニバーサル圧延や鋼管圧延等、大規模な製造に広く使われています。
(引き抜き、押し出し)
引き抜き加工とは、素材を円錐状のダイスに通し、製品を引き抜く加工法です。棒鋼、線材の製造に利用されています。太い製品は熱間で、細い製品は冷間で製造されます。ピアノ線や注射針等も冷間の引き抜き加工でつくられます。
押し出し加工は、素材をコンテナに入れ、ステムで素材を押し、出側のダイスから製品を押し出す加工法です。押し出し加工では素材の変形抵抗が大きいため、非常に大きな圧力が必要です。この為、従来は熱間がほとんどでしたが、近年では、潤滑剤や工具等の改良で冷間も可能となってきました。
(曲げ加工)
曲げ加工とは、板材をダイ上に置き上から加圧することにより板を曲げる加工法です。板材から箱をつくる加工法で、スチール家具、家電外板等に使われています。
曲げ加工では、スプリングバックという現象が生じます。スプリングバックとは、スプリングを伸ばしても手を離せば元に戻るように、曲げ加工しても、弾性変形分が元に戻る現象です。スプリングバックは、曲げ加工後、曲げ方向と逆に戻ります。この為、型通りには加工できないので、スプリングバックを考慮して、少し深目の型を作り、目的とする形状に加工します。
(せん断加工)
せん断加工とは、上下の刃で素材を切断する加工法です。板材を目的の大きさに切る時に、よく使われます。身近な例では、ハサミがあります。
せん断加工は、上下の刃の間隔を減少させ素材を切断します。この時、刃と刃の間隔クリアランスの設定が重要になります。クリアランスには最適な値があり、大きくても小さくても綺麗に切断できません。
板材の切断面には、必ずバリと呼ばれる刃状の突起物があり、取扱い時、切創に注意が必要です。バリを小さくするには、刃先の摩耗管理とクリアランス管理が重要です。
熱延鋼板や冷延鋼板等の鋼板類は、製鉄所から1m~1.6m程度の幅で出荷されますが、もっと狭い幅で使用する需要家が多いので、鋼材の幅を落とす専門の業界があります。この業界をコイルセンターといい、全国に数百社あります。
(絞り加工)
絞り加工とは、板材の上下をホルダーとダイスで抑えパンチで深く抑え加工する方法です。絞り加工は、素材自体が加工前後で移動します。このように、板が流体のように、金型の中をスムースに動けることが重要です。したがって、シワを押える力及びパンチとダイのクリアランスの設定等の金型設計が、加工のポイントになります。
絞り加工は、板材の大規模な成形加工に適している為、自動車工場での車体のプレス加工等に多用されています。この為、素材である冷延鋼板等は自動車の絞り加工性を向上させる方向で、長年、機械特性の改善が行われてきました。
(張出し加工)
張出し成形とは、絞り成形と異なり、加工中、素材が動かないようにした加工法です。張出し加工は、ダイスとホルダーに溝をつけ板材が動かないようにしています。この為、絞り加工程深く成形ができず、又、成形品の板厚も薄くなります。しかし、金型等が簡易なので、
主に小さな部品製作等に使われています
次に重要な特徴が、加工がし易いということです。鉄鋼製品は、需要家で加工し、需要家の目的にあった形に成形されます。この需要家での加工には、鍛造、圧延、引き抜き、押し出し、せん断、曲げ、絞り、張出し等あります。加工がし易いとは、需要家での加工方法が多くあり、かつ、各々の加工でも他の素材より加工し易いということです。この鉄の強度コントロールがし易く、かつ加工し易いという特徴とコストが安いことが相まって、鉄は金属の中で最も使用量が多くなっています。
加工法の説明の前に、金属の弾性と塑性を説明します。弾性とは、例えば、バネを引張ると伸び、引張をやめると元に戻りますが、この元に戻る範囲内の変形をいいます。塑性とは、例えば、針金を手の力で強く曲げると、手を放しても曲げた形状がそのまま残ります。この元に戻らない変形を塑性変形といいます。
針金を曲げる時を思い出してください。最初少し力を加えた時は、針金は弾性変形内で元に戻ろうとしますが、さらに力を加えていくと塑性変形となり元に戻らなくなります。このように、変形の最初の段階は弾性変形が起こり、さらに力を加えていくと塑性変形になります。
縦軸に荷重、横軸に変形量の伸びをとると、このグラフは、金属の荷重と変形の関係を表しています。このグラフから、荷重があるところ迄は弾性変形が起こり、それ以上の荷重では塑性変形が起こることを分かります。
この弾性限度の荷重を降伏点YP(Yield Point)、最大荷重を引張強度TS(Tensile Strength)、破断した伸びを伸びEl(Elongation)といい、金属加工では重要な指標です。
金属加工とは、金属に降伏点以上の力を加え、塑性変形を起こし、元に戻らない形状を作ることをいいます。したがって、降伏点が小さい程、加工がし易く、逆に大きい程、加工がし難くなります。このことは、加工の基本であり重要です。鉄の場合は、一般的に降伏点と引張強度及び硬さは比例関係にあり、伸びは逆比例の関係にあります。
(鍛造)
鍛造とは、プレス機やハンマー機等で、素材の一部または全体を圧縮、又は打撃により加工する方法です。身近な鍛造品としては日本刀があります。赤く加熱された日本刀をハンマーで叩きながら鍛錬する様子は鍛造の原風景だと思います。
鍛造には、温度で分類すると、熱間、温間、冷間に分けられ、又、鍛造方法で分類すると、自由鍛造と型鍛造に分けられます。
熱間とは、素材を800℃~1000℃程度に加熱して鍛造する方法です。冷間とは、常温で鍛造する方法で、温間とは、熱間と冷間の中間の温度で鍛造する方法です。
熱間、冷間の得失は、複雑な形状や大型部品の加工には、熱間が優れますが、表面の仕上がりや寸法・形状精度の面では冷間の方が優れます。したがって、冷間鍛造は、鍛造後の機械加工がいらないので、自動車部品のボルトやナット、歯車などの小型製品に利用されています。
自由鍛造とは、型や枠がなく自由に加工形状を決められる鍛造ですが、型鍛造は、決められた型通りに鍛造します。自由鍛造は、大型部材を製造するのに主に用いられ、型鍛造は、小・中型部品の量産に用いられます。
(圧延)
圧延とは、上下の圧延ロールで素材を薄く延ばす加工方法です。圧延は、うどん粉を延ばす作業に似ていますが、大きな違いは、材料が横方向に伸びないことです。これは、圧延の場合、圧延方向に強く引張り、材料が横方向に拡がらないようにするからです。したがって、圧延前後の材料の幅はほとんど変化しません。圧延は、製鉄所等で板材や条鋼の製造に広く利用されています。
製鉄所の板材の圧延を例にとりもう少し詳しく圧延を説明します。熱間圧延とは、素材の温度を上げて圧延することで仕上圧延入側で800~900℃、出側で500~700℃程度で圧延します。温度が上がれば素材が軟らかくなるので、高い圧下率と高速圧延が可能になります。最新鋭の熱間圧延機は、圧下率90~95%(仕上圧延入側厚=数十mm、出側厚=数mm)、圧延速度100km/H程度で圧延が可能です。
冷間圧延とは、素材を加熱せず常温で圧延します。この為、高精度の圧延が可能で、通常材は、板厚0.4mm~数mmですが、極薄材として、板厚0.1mm程度、板厚精度±3%程度の圧延も可能です。その他の圧延としては、H形鋼の圧延方法であるユニバーサル圧延や鋼管圧延等、大規模な製造に広く使われています。
(引き抜き、押し出し)
引き抜き加工とは、素材を円錐状のダイスに通し、製品を引き抜く加工法です。棒鋼、線材の製造に利用されています。太い製品は熱間で、細い製品は冷間で製造されます。ピアノ線や注射針等も冷間の引き抜き加工でつくられます。
押し出し加工は、素材をコンテナに入れ、ステムで素材を押し、出側のダイスから製品を押し出す加工法です。押し出し加工では素材の変形抵抗が大きいため、非常に大きな圧力が必要です。この為、従来は熱間がほとんどでしたが、近年では、潤滑剤や工具等の改良で冷間も可能となってきました。
(曲げ加工)
曲げ加工とは、板材をダイ上に置き上から加圧することにより板を曲げる加工法です。板材から箱をつくる加工法で、スチール家具、家電外板等に使われています。
曲げ加工では、スプリングバックという現象が生じます。スプリングバックとは、スプリングを伸ばしても手を離せば元に戻るように、曲げ加工しても、弾性変形分が元に戻る現象です。スプリングバックは、曲げ加工後、曲げ方向と逆に戻ります。この為、型通りには加工できないので、スプリングバックを考慮して、少し深目の型を作り、目的とする形状に加工します。
(せん断加工)
せん断加工とは、上下の刃で素材を切断する加工法です。板材を目的の大きさに切る時に、よく使われます。身近な例では、ハサミがあります。
せん断加工は、上下の刃の間隔を減少させ素材を切断します。この時、刃と刃の間隔クリアランスの設定が重要になります。クリアランスには最適な値があり、大きくても小さくても綺麗に切断できません。
板材の切断面には、必ずバリと呼ばれる刃状の突起物があり、取扱い時、切創に注意が必要です。バリを小さくするには、刃先の摩耗管理とクリアランス管理が重要です。
熱延鋼板や冷延鋼板等の鋼板類は、製鉄所から1m~1.6m程度の幅で出荷されますが、もっと狭い幅で使用する需要家が多いので、鋼材の幅を落とす専門の業界があります。この業界をコイルセンターといい、全国に数百社あります。
(絞り加工)
絞り加工とは、板材の上下をホルダーとダイスで抑えパンチで深く抑え加工する方法です。絞り加工は、素材自体が加工前後で移動します。このように、板が流体のように、金型の中をスムースに動けることが重要です。したがって、シワを押える力及びパンチとダイのクリアランスの設定等の金型設計が、加工のポイントになります。
絞り加工は、板材の大規模な成形加工に適している為、自動車工場での車体のプレス加工等に多用されています。この為、素材である冷延鋼板等は自動車の絞り加工性を向上させる方向で、長年、機械特性の改善が行われてきました。
(張出し加工)
張出し成形とは、絞り成形と異なり、加工中、素材が動かないようにした加工法です。張出し加工は、ダイスとホルダーに溝をつけ板材が動かないようにしています。この為、絞り加工程深く成形ができず、又、成形品の板厚も薄くなります。しかし、金型等が簡易なので、
主に小さな部品製作等に使われています
鉄の性質 ③熱処理
2018.01.26
前節で、鉄の炭素量と組織について説明しました。
再度、鉄-炭素系状態図を見てください。この図の左中央部のオーステナイト迄加熱し、このオーステナイトから、空気中で自然冷却することを焼きならし、自然冷却よりゆっくり冷却することを焼きなましといいます。
例として、状態図のS点(C:0.77%)の少し上のオーステナイトから、冷却していく場合を考えてみましょう。この場合、温度がS点以下になると、オーステナイト組織が、フェライトとセメンタイトの組織に変わります。この組織が変化することを変態といい、この場合の変態をパーライト変態といいます。パーライトの結晶組織の黒い線状に見えるのがセメンタイト、白く見えるところがフェライトです。
このパーライト変態は、冷却速度が速い程微細化し、より硬く(強度が高く)なるので、焼きなましより焼きならしの方が、パーライトが微細化し、より硬くなります。
この空気冷却などで得られる微細なパーライトは、ソルバイトと呼ばれます。
冷却速度をさらに上げ、水冷却をすることを焼き入れといいます。焼き入れするとオーステナイト組織が、マルテンサイト組織に変態します。このマルテンサイト組織は非常に硬く、日本刀の焼き入れ時にできる組織です。しかし、硬いと同時に脆いので、この脆さを改善する必要があり、再度700℃未満に加熱し徐冷します。この熱処理を焼き戻しといい、焼き入れ後に行う熱処理です。この焼き戻しにより、組織は、硬く、強靭になり鋼の性能を発揮します。
以上のように、オーステナイトからの冷却速度の違いにより、鋼の組織と硬さ(強度)が大きく変化します。冷却速度の小さい順に、組織名を並べると、(パーライト)→(ソルバイト)→(トールスタイト)→(マルテンサイト)になります。
トールスタイトとは、パーライトやソルバイトと同じものですが、一層細かな組織です。以上が熱処理の違いによる組織の変化の説明ですが、炭素量の違いでも組織は変わります。もう一度、状態図を見てください。炭素量0.77%のS点より炭素が少ない領域では、フェライトが多くなりパーライト+フェライトの組織になり、S点より多い領域では、セメンタイトが多くなり、パーライト+セメンタイトの組織になります。
このように、鋼の組織は、炭素量と熱処理方法で大きく変化します。これが鋼の最大の長所であり、特徴です。
日本の伝統工芸品である日本刃は、4種類の鋼(心金、棟金、刃金、側金)を鍛錬し、日本刀の形に仕上げます。これを約800℃迄加熱し、水冷して焼き入れます。焼き入れた刃金にはマルテンサイトが生成し非常に硬くなります。しかし、同時に脆くなるので約150℃迄再加熱し焼き戻しを行い、強靭な刃先に仕上げます。刃金の炭素量は1.0~1.5%であり、急冷するのでパーライトは形成されず、マルテンサイトが形成され非常に硬い組織になるのです。
再度、鉄-炭素系状態図を見てください。この図の左中央部のオーステナイト迄加熱し、このオーステナイトから、空気中で自然冷却することを焼きならし、自然冷却よりゆっくり冷却することを焼きなましといいます。
例として、状態図のS点(C:0.77%)の少し上のオーステナイトから、冷却していく場合を考えてみましょう。この場合、温度がS点以下になると、オーステナイト組織が、フェライトとセメンタイトの組織に変わります。この組織が変化することを変態といい、この場合の変態をパーライト変態といいます。パーライトの結晶組織の黒い線状に見えるのがセメンタイト、白く見えるところがフェライトです。
このパーライト変態は、冷却速度が速い程微細化し、より硬く(強度が高く)なるので、焼きなましより焼きならしの方が、パーライトが微細化し、より硬くなります。
この空気冷却などで得られる微細なパーライトは、ソルバイトと呼ばれます。
冷却速度をさらに上げ、水冷却をすることを焼き入れといいます。焼き入れするとオーステナイト組織が、マルテンサイト組織に変態します。このマルテンサイト組織は非常に硬く、日本刀の焼き入れ時にできる組織です。しかし、硬いと同時に脆いので、この脆さを改善する必要があり、再度700℃未満に加熱し徐冷します。この熱処理を焼き戻しといい、焼き入れ後に行う熱処理です。この焼き戻しにより、組織は、硬く、強靭になり鋼の性能を発揮します。
以上のように、オーステナイトからの冷却速度の違いにより、鋼の組織と硬さ(強度)が大きく変化します。冷却速度の小さい順に、組織名を並べると、(パーライト)→(ソルバイト)→(トールスタイト)→(マルテンサイト)になります。
トールスタイトとは、パーライトやソルバイトと同じものですが、一層細かな組織です。以上が熱処理の違いによる組織の変化の説明ですが、炭素量の違いでも組織は変わります。もう一度、状態図を見てください。炭素量0.77%のS点より炭素が少ない領域では、フェライトが多くなりパーライト+フェライトの組織になり、S点より多い領域では、セメンタイトが多くなり、パーライト+セメンタイトの組織になります。
このように、鋼の組織は、炭素量と熱処理方法で大きく変化します。これが鋼の最大の長所であり、特徴です。
日本の伝統工芸品である日本刃は、4種類の鋼(心金、棟金、刃金、側金)を鍛錬し、日本刀の形に仕上げます。これを約800℃迄加熱し、水冷して焼き入れます。焼き入れた刃金にはマルテンサイトが生成し非常に硬くなります。しかし、同時に脆くなるので約150℃迄再加熱し焼き戻しを行い、強靭な刃先に仕上げます。刃金の炭素量は1.0~1.5%であり、急冷するのでパーライトは形成されず、マルテンサイトが形成され非常に硬い組織になるのです。